契約書をチェックするときの注意点③ ー取引の全体像を描けるように定めるー
弁護士堀内のブログ2022.0225
契約書をチェックするときに、まず見るところといえば、表題です。
契約書には「売買契約書」とか、「業務委託契約書」とか、「工事請負契約書」といった、表題が書かれているのが通常です。「売買契約書」だと売買契約について定められているというふうに考えます。
では、売買契約書には、売買についてのみ定められているでしょうか。
例えば、次のような売買契約書があったとします。問題点はあるでしょうか。
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1 甲(売主)は乙(買主)に対して、月に1度、ワインを3本売る。
2 どのワインを売るかを甲が選び、毎月売買代金は3本合計1万円(税抜)とする。なお、乙は代金引換にて売買代金を支払う。
3 甲は、選んだワインを、毎月末日までに、乙の指定する場所に届けるものとし、届けている途中にワインが割れたときには、ワインの交換にかかる費用を甲が負担するものとする。
4 本契約の有効期間は、2022年1月1月から1年間とする。
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一見問題がないように見えます。
でも、この取引を頭の中でイメージしてみて下さい。
甲が3本選んで・・・発送して・・・
乙がワインを受け取る・・・お金を代引きで支払う・・・
これを12回繰り返す・・・・
問題出てきましたね。分かりましたか?
1点目。発送のときに送料を払いましたね。この契約ではワインの送料は誰の負担になっていますか?
書いてませんね。書いてないことを推測しない。これは契約書をチェックするときの注意点②で述べたとおりです。
2点目。乙がワインを受け取りましたね。もし乙がワインを受け取らなかったらどうします?代引きだから、甲は送ったのに乙が受け取らないと、甲はワインの代金を受け取れずに損をするということがあり得ます。そうすると、甲にとっては、乙がワインを受け取らないというリスクを回避する必要があります。どうすればいいでしょうか?
頭の中で取引をイメージするだけで、少なくとも2点の問題点が出てくるわけです。
取引の全体像を頭で描いてみる。そして、頭で描いた全体像のどこかを逆にしてみる。ここでいえば、「乙がワインを受け取る」というところを「乙がワインを受け取らない」に変えてみるわけです。
そして、逆にした状況を契約書によってフォローできているかをチェックする。これが重要です。