契約書をチェックするときの注意点① ー読み流すことなかれー
弁護士堀内のブログ2022.0207
前回までは「契約書を作るときの注意点」ということで書いてきました。今日からは「契約書をチェックするときの注意点」ということで書きたいと思います。
「契約書を作れるんだったら、契約書をチェックすることもできるんじゃないのか?」と思われる方もいらっしゃると思います。
確かにそうなんです。作れるならばチェックもできます。ただ、チェックする際に特有の注意点というのもあります。
まずは、「読み流すことなかれ」です。
契約書をチェックするという状況にあるということは、契約書を作ったのは自分ではない、ということだろうと思います。そうすると、なぜその規定を作ったのかは分からないので、読み解いていくしかないわけです。
でも、一応契約書という形があるので、「多分このままサインしても大丈夫だろう」とか、「定型の契約書を使っているだろうから、チェックしてもしなくても同じだろう」とかいうように思ってしまいがちです。そう思ってしまうと、なぜその規定があるのかを読み解く、などといったことをすることはありません。そうやって相手の思うつぼにはまってしまったりするわけです。
では、どうやったら「読み流す」ということをしなくて済むのでしょうか。
いろいろな方法があるのかもしれませんが、私が普段からやっているのは、①「この規定があることによって、こちらは何をもらえるのか」を考えることと、②「この規定があることによって、こちらは何をしなければならなくなるのか」を考えること、です。私は、この作業を、契約書に書いてある全ての規定についておこなっています。
①ですが、契約をすることによってこちらにも何かしらのメリットがあるわけですから、そのメリットが具体的に何なのかを把握するということです。例えば、こちらが相手にリンゴ10箱を1000万円で売る、という内容になっていれば、普通はおかしいはず。そうすると私は、「誤記じゃないか?もしくは何か事情がある?すごいレアものか?」などと考えるわけです。そこで私は、私にチェックを依頼したクライアントにその旨を伝えて、事情を聞く。もちろん私の取り越し苦労という場合もありますが、そうでなくて、重大な間違いであることもあります。こちらと相手方では、そもそも売る対象となるものに食い違いがあったとか、そもそも売るつもりがなくて貸すつもりだったから安かったとか、いろいろあります。そういうことをチェックするには、「何をもらえるのか」を考えることが重要になってきます。
②ですが、しなければならないことをしなかったときには「債務不履行」といって、損害賠償されたり解約されたりします。つまり一般的には、やりづらいことをしなければならないとしてしまうと、それだけ債務不履行になるリスクが高くなるというわけです。ですので私としては、「この規定からすれば、こんなことをしなければならなくなりますが、それってできますか? できるとしてもコストと見合う対価をもらってますか?」などと考えて、その旨をクライアントに伝えるわけです。
「こういう契約だと法的に絶対にしないといけない」こともあります。例えば、土地を売ったら、所有権が移転したという登記をする義務というのが発生したりしますし、売買代金を払う義務が発生したりします。そうではなくて、「法的に絶対にしないといけないわけではないけれど、契約によってやらないといけないこととなった」ことというのもあります。そういうことが契約書に書いてあったけれども読み流してしまったことによって、債務不履行になるリスクを回避できなかったなどということはよくある話です。そういうことを回避するには、「何をしなければならなくなるか」を考えることが重要になってきます。
このあたりのことは、法律的にどうこうというより、意識して契約書を読めるか、ということだと思います。「契約書のチェックを任されてるんだけど、何をどうチェックしたらいいのか分からないんだよね」という方は、是非試してみて下さい。