リバースモーゲージ ー自宅を担保に老後資金を借りる方法ー
お知らせ弁護士堀内のブログ2024.0303
街中を歩いていると、とある銀行の前で、自宅を担保にして、自宅に住みながら老後の生活費を銀行から受け取る、という広告を見ました。
これはリバースモーゲージというシステムですが、本日はリバースモーゲージについてご説明しようと思います。
まず、自宅を担保にして生活費を受け取る、というのは、どういう仕組みなのでしょうか。
例えば、今日、この契約を銀行とするとして、今日の自宅の価値が3000万円だとします。また、年齢は70歳とします。そうすると、銀行からいくら借りることができるでしょうか。
いろんなことを考慮しないといけないのですが、多くとも3000万円で、それ以上は貸してくれないと思います。
では3000万円借りることができるとします。ただここで、一気に3000万円を受け取るのではありません。
例えば月々10万円をもらうこととするなどして、自宅を担保にして借りるお金を、月々分割して受け取ることとなります。
では、何年何か月もらえるでしょうか。
3000万円を1か月10万円ずつですから、300か月で、25年です。つまり、95歳までは月10万円もらえるということになります。
でも、こういう仕組みは、皆様がご存じの担保の仕組みとは違うと思います。
皆様がよく知っている担保の仕組みは、こういうのだと思います。
つまり、2000万円の自宅を買うのに銀行からまず2000万円を借ります。そのうえで、月々例えば10万円ずつ返します。それで200か月で完済して、担保が外れます。これが普通の担保の仕組みです。でも、今回のケースはそうではありません。
2000万円の自宅を担保にいれて、月々10万円ずつもらいます。それで200か月で満額借ります。そのうえで、2000万円を返すか自宅をあげるかを決めます。
このように、通常は一括で借りて分割で返すのですが、今回は分割で借りて一括で返すわけです。
担保にはいろいろ種類がありますが、通常は抵当権、といわれる種類の担保にします。
それで、今回のような抵当権の仕組みは、通常とは逆の抵当権、ということで、逆抵当といわれます。英語にすると、リバースモーゲージ といいます。リバースは逆という意味で、モーゲージは抵当という意味です。
このように、リバースモーゲージは、自宅がある方なら、それを担保にして生活費を銀行から受け取ることができるので、夢のような仕組みに思われます。
しかし、このリバースモーゲージには知っておくべき点がいくつかあります。
まず1つ目は、総額いくら借りることができるか、という点です。
例えば自宅の価値が現在3000万円だとします。先程の例では、総額3000万円を借りるという設定にしましたが、実際にはそういうわけにはいきません。
なぜなら、今は3000万円の価値があるかもしれませんが、何年か先には値段が下がっているかもしれないからです。リバースモーゲージはもともと長期間の取引になるものですから、その間の景気によって不動産の価値が変動します。また、一戸建てとマンションでは、価格の安定性が大きく違います。一戸建てだと、自分だけが所有している土地がありますが、マンションにはそれがありません。土地の値段はある程度安定するのですが、建物の値段は年数がたてば大きく下がりますので、一戸建てに比べてマンションの場合は、不動産の価値が不安定になりがちです。
こういった理由などから、例えば、借り入れる総額が、現在の自宅の価値の6割までとか、マンションについてはリバースモーゲージが組めない、とかがあります。各銀行によって異なりますので、その点はご注意されたほうがいいと思います。
2つ目は、長寿リスクといわれるものです。
例えば、最初の例で、自宅が3000万円で、70歳で、総額3000万円借りることができ、月々10万円受け取るとします。そうすると、300か月、つまり25年間受け取ることができます。このときには95歳になっています。では、95歳を超えてもまだ生きている場合には月10万円を受け取ることができるのでしょうか。
また、先程説明したように、リバースモーゲージでは、最後に総額を一括で支払うか、自宅をあげるかを選ばなくてはいけません。そうすると、95歳を超えても生きているのに3000万円を一括で払わないといけないのか、それが無理なら自宅をとられるのか、という問題が起きます。このようにリバースモーゲージを使っている人が長く生きることから生じる問題を、長寿リスクといわれます。
月々の受け取りが完了しても生きているときに、月々の受け取りができるのか、できないとしても、生きているうちは住み続けることができるのか、という点を十分に確認されるのがいいと思います。
以上、ざっとですが、リバースモーゲージについて説明致しました。
老後の生活設計をどうするかは非常に大事な問題です。
リバースモーゲージも1つの方法だとは思いますが、いろいろ考えなければならないことがあります。
せっかく長く生きたのに、困ることになってしまったということのないよう、十分にご検討いただければと思います。