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ドロップシッピングの契約書で注意する点

お知らせ弁護士堀内のブログ2024.0623

1 ドロップシッピングとは?  

例えば、A会社が運営するECサイトがあり、B会社が製造している商品Cを販売しているとして、そのECサイトで商品CをDさんが購入すれば、商品CをA会社がDさんに直接発送して届けるというビジネスモデルです。

A会社にとっては、在庫を抱えないので倉庫が不要なうえ、注文処理を最小限にすることができるというメリットがありますが、その分競合他社が多く、また在庫を持たないため欠品が生じやすいというデメリットがあります。

 

2 ドロップシッピングの契約書で注意する点

1の例でいえば、A会社とB会社との間で商品Cの売買契約を締結することになりますが、どのような点を注意すればいいでしょうか。 

 

① 基本契約と個別契約が必要 

一般的に、売買が1回しかなければ「売買契約書」という1つの契約書で足りますが、ドロップシッピングに限らず、ある一定期間に何度も売買が行われるような場合には、「売買基本契約書」と「売買個別契約書」という2つの契約書を作る方がいいです。「売買基本契約書」とは、複数回の売買において共通する内容を定めた契約書のことをいい、「売買個別契約書」とは、個々の売買にのみ通用する内容を定めた契約書のことをいいます。例えば、契約の解除に関する規定は「売買基本契約書」に定めることになりますし、売買する個数については「売買個別契約書」に定めることになります。 

 

② 売買代金 の定め方

売買代金は通常、個々の売買によって異なりますので「売買個別契約書」に定めることになります。ただドロップシッピングの場合、B会社としてはA会社が勝手に値引きしたら、他のドロップシッピング業者とのバランスが取れず、A会社以外の業者とトラブルになる恐れがあります。ですので、「売買基本契約書」において、「売買価格は売買個別契約書にて定めるが、その金額の決定はB会社が行うものとする」と定めるほうがいいと思われます。 

 

③ B会社に商品Cの在庫がない場合  

先程、ドロップシッピングのデメリットとして、在庫を持たないため欠品が生じやすいということを挙げましたが、欠品の責任を誰が負うかという問題が生じます。

これは当然、在庫を持たないビジネスモデルを選んだA会社が負うべきですので、「売買基本契約書」において、例えば、「B会社における商品の在庫状況によっては、B会社は売買個別契約が成立しないものとする、もしくは個数を変更して売買個別契約を成立させることができるものとする」と定めるほうがいいと思われます。

 

④ 商品の引渡しとそれに要する費用 

ドロップシッピングの場合、商品をDさんに引き渡すのはB会社になりますので、「売買基本契約書」において、「B会社は、売買個別契約にて取り決めた日時および場所にて商品Cを引き渡すものとする。なお、商品Cの引渡しに要する送料その他の費用はB会社の負担とする」と定めることになります。

送料の負担をB会社がすると定めていますが、売買代金を決めることができるのはB会社であることから、A会社には「売買代金に送料を上乗せして販売する」ということができないため、送料の負担はB会社がするのが通常です。

 

⑤ 契約不適合の場合

数量の間違いや商品の取り違えなどがあって、Dさんが購入したものとは異なっている場合、契約不適合といいますが、契約不適合があった場合、誰がどのような責任を負うのでしょうか、という問題です。

例えば、A会社がB会社から商品Cを仕入れて、A会社がDさんに商品Cを送るという普通の小売りの場合だと、AB間で契約不適合責任があれば、B会社がA会社に商品の交換などを求めて、契約に適合するものをB会社がDさんに送ることになります。

実は、ドロップシッピングも同様で、法的にはBA間とAD間にそれぞれ売買契約があるという扱いになるため、Dさんが商品CについてクレームするのはB会社ではなくA会社になります。つまりA会社は、「一度も目にしたことのない商品についてクレーム処理をする必要がある」ということになります。もちろん、Dさんに商品を送ったのはB会社ですので、DさんはB会社にクレームすることもあり得ます。そのときも、クレーム処理をするのはA会社ということになります。つまり「売買基本契約書」において、「A会社が商品Cを販売した顧客から、数量不足や商品の欠陥等の契約不適合についてのクレームがあったときには、全てのクレームにつきA会社が処理をするものとする。なおこの処理に要する費用はA会社の負担とする」と定めることになります。

 

⑥ Dさんからの返品があった場合 

これも⑤と同様で、A会社が売主、Dさんが買主ですので、「売買基本契約書」において、「契約不適合により顧客から返品を伝えられた場合には、A会社の責任と費用をもって適切に対応しなければならない」と定めることになります。 

 

⑦ 顧客情報の管理 

A会社にとっては、顧客情報を管理することはもちろんですが、ドロップシッピングにおいては、A会社の販売に関する情報の大半(誰が、どんな商品を、どこへ送るようにA会社に伝えたか、など)をB会社も持つことになります。したがって、「売買基本契約書」において、「本契約に基づいてB会社が得たA会社の販売に関する情報については、漏洩、第三者に譲渡ないし開示してはならない」と定めることは必須になると思われます。 

 

⑧ B会社が商品の発送に遅れた場合 

Dさんとの関係では、B会社はあくまで「A会社の卸元であり、かつ送付元」にすぎません。ですので、B会社が商品の発送に遅れた場合、Dさんとの関係ではA会社が責任を負うことになります。しかも欠品の場合にはAB間での売買は白紙となる(上述)ので、「売買基本契約書」において、例えば「顧客に対して納品が遅延した場合には、A会社の責任および費用において適切に対応しなければならない。ただし、遅延の原因がもっぱらB会社の責に帰すべき事由による場合には、A会社はB会社に対し、応分の費用の負担を求めることができる」といった定めをすることになります。 

 

3 最後に 

ドロップシッピングは少ない費用でECサイトをスタートさせることができる反面、うまくいかなかったときの責任は全てECサイト運営会社が負うことになりかねません。ドロップシッパーとの連携がうまく取れるかどうかが、リスク回避にとって非常に重要になると思います。 

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