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契約不適合責任条項について注意すべきこと(特に、契約不適合の意味と代金減額)

お知らせ弁護士堀内のブログ2024.0505

2020年4月に施行された改正民法では、売買契約において、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に対して、①目的物の修補、②履行の追完、③代金の減額請求、④損害賠償請求、⑤解除、ができることとなっています。これらを契約不適合責任といいます。従前の瑕疵担保責任との違いは、契約不適合責任では買主が損害賠償請求をするするためには売主に帰責性が必要となったことと、代金の減額を請求できるようになった点です。

ここでそもそも「引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないもの」とは具体的にどういうことをいうのでしょうか。

例えば、「リンゴを10個売る」という売買契約において、ミカンを10個納入した場合は、「種類に関して契約の内容に適合しない」といえるでしょう。また同様に「リンゴを10個売る」という売買契約において、リンゴを9個納入した場合は、「数量に関して契約の内容に適合しない」といえるでしょう。このように、種類に関して契約の内容に適合しない場合と数量に関して契約の内容に適合しない場合は想定しやすいです。

では、「リンゴを10個売る」という売買契約において、ちょっと古くなったリンゴを10個納入した場合はどうでしょうか。一見「品質に関して契約の内容に適合しない」といえそうな気もします。でも、このリンゴはリンゴ自体を販売するのではなくてジャムにして販売するために仕入れたものであったらどうでしょう。多少古くても値段が安い方がいいという考え方もでき、そうであれば「品質に関して契約の内容に適合しない」といえないともいえます。

同様に、ある土地を売買したところ、土地を引き渡した後に、地下3mのところに金属くずが大量に埋まっていることが発覚した場合、この土地は「品質に関して契約の内容に適合しない」といえるでしょうか。一般的な木造の一戸建てを1件建築するだけならば地下3mまで掘ることはなく、地下3mのところに何があっても建築に問題ないから、地下3mのところに金属くずが大量に埋まっていても、その土地が「品質に関して契約の内容に適合しない」とはいえなさそうです。しかし、その土地が大規模な宅地造成を行うような分譲地で、地下に浄化槽を埋設するような状況であれば、地下3mのところに金属くずが埋まっていては円滑に浄化槽を埋設できないので、その土地は「品質に関して契約の内容に適合しない」といえそうです。実際にそのように判示した判決もあります(東京地方裁判所平成15年5月16日判決)。

このように品質については「契約の内容に適合しない」かどうかが争いになるケースがあるので、売買契約書に「本売買の目的物は、●●に利用するものであって、●●の利用に支障が生じる場合には契約不適合があるものとみなす」などと定めておいた方がいいと思います。

次に代金減額請求ですが、これは売主、買主ともに非常にやっかいな規定だと思っています。というのは、減額請求をした際の経理処理がやっかいだと思っているからです。

どういうことかというと、先程のリンゴの案件で、ちょっと古くなったリンゴが3個あって、その3個については代金減額で処理することになったとします。この場合、おそらく納入後すみやかに買主が売主にクレームを伝えたのでそういうことになったのだと思います。そうすると、代金減額はおそらく値引きで処理することになり、特に経理処理上問題はないと思われます。

しかし、50万円のコピー機を売ったところ、使用開始後6カ月目で、納入された機種が売買契約をした機種ではなく45万円の機種だったことが発覚したとします。この場合、5万円の減額で処理することになるでしょうが、実際どのように経理処理することになるでしょうか。

買主にしてみれば、50万円のコピー機を買ったという所定の仕訳をして経理処理をしていたでしょう。しかも30万円を超えているので償却財産です。

そうであるのにいきなり5万円を減額したらどのように経理処理しますか? しかももし「使用開始後6カ月」というのが期をまたいでいればどうしますか? 既に償却してしまっている償却財産の価値を下げるんですか、という問題が生じます。さらに訴訟になって、解決に1年かかった場合などを想定すると、経理処理が非常に面倒だということが想定されます。わざわざ5万円のために決算・申告を修正ないし更正するわけにもいかないし。

こういうことを考えると、代金減額については、代金の定めにおいて「代金を●●円とし、買主は理由の如何を問わず、代金の支払い後においては代金の減額を請求できない」と定めて、代金の支払い後の代金減額を否定し、上記のような事態は損害賠償で処理するというのが望ましいと思っています。

このような問題があるので、契約不適合責任をどのように契約上処理するかは、このような経理処理の点から検討をしたうえで、各社がコンセンサスをもっておく必要があると思います。

 

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