契約書を作るときの注意点② ーこの契約書では契約違反を問えないー
弁護士堀内のブログ2022.0118
契約書を作るときの注意点①で書いたことですが、契約書で重要なのは、「契約書で誰が何をするかを明確にする」ということです。
もしこれをしていないとどうなるか? 例えばこんな事例を考えてみて下さい。契約書を作るときの注意点①で書いた、A会社が保有しているCという機械の修理をB会社に依頼したというケースを使ってみます。
「Bは壊れたCを調査したところ、部品Dが壊れていることが原因だと考えた。そこでDを交換して修理を完了したので、CをBに返した。ところがBが使っていると、きちんと動かない。この時AはBにどんなクレームを言えるか?」
契約書を作るときの注意点①で書いたことですが、契約書に「Cを調査して、Cで●●ができるようにする」と書いていなければ、Bはひょっとしたら「きちんと調査して、Dが壊れていることが原因だと考えたので、これを交換して修理しました。だから契約書で決められたことはきちんとおこなったので、これ以上やれというのであれば追加料金を下さい」と言うかもしれません。
このBの言い分が絶対に通ると言い切ることはできませんが、少なくとも、契約書があるのに、Bがこのようなことを言ってきて、しかもその言い分がまかり通ってしまう可能性があるわけです。これでは何のために契約書を作ったのか分かりません。
例えば、「AはBから車を買った。代金は100万円だった。AはBに100万円を払ったと同時に、BはAに車を渡した」というケースがあったとします。このとき、契約書はなくてもいいんです。なぜなら、契約書で定めることをAもBもきちんとおこなったので、契約書の出番がないからです。つまり、契約書を作るメリットというのは、「契約後にトラブルが起こるのを阻止する」、あるいは「契約後にトラブルが起こっても自分が勝てるようにする」というところにあります。なので、上で書いたように、契約後にトラブルが起こったときに自分が負けるのを阻止できなかった契約書は、存在価値がないんです。
契約書を作るときに、「契約書の内容は、このぐらいの書きっぷりでいいよ。もめたらその時だわ」といって、具体的な取り決めを全然しない人がいます。これは契約書が何のためにあるのかを完全にはき違えているわけです。
もちろん、契約の時には全く想定できなかった事態が起こって、自分にデメリットが降りかかることはあります。それを契約書で阻止することはかなり難しい。でも、いくらかは想定できるのであれば、それは契約書を作ることによってデメリットを阻止すべきだと思います。
上で書いた例でいえば、結局Bに契約違反の責任を負わせるためには相当の労力がかかるし、弁護士に依頼して費用がかかるし、と、いいことがありません。
契約書では、とにかく具体的に定める。これを忘れないようにして頂きたいと思います。