契約書を作るときの注意点⑥ ー納品したものが不完全だったときにどうなるかー
弁護士堀内のブログ2022.0128
契約どおりに事が進んで納品されたものの、チェックしてみると「思っていたのと違う・・・」ということはあり得ます。こういうときのために、契約書にはどんな定めをしておけばいいでしょうか。
契約書を作るときの注意点③で書いたような、「何をするのかを具体的に定める」ということをクリアしていることを前提とすると、「具体的に定めているとおりになってない」ということになります。例えば、家をリフォームしてもらったけれどもクロスがオーダーしたものとは違っているとか、ホームページを作ってもらったけれどもボタンをクリックしてもページが遷移しないとか。つまり納品されたものが不完全だということです。
「納品されない」というわけではないのですが「不完全だ」という場合、法律的には「不完全履行」といって、不完全履行であれば損害賠償や解除が可能です。では、「補修してもらう」ということは可能なのでしょうか。
別の業者に依頼すると余計な費用と時間がかかるので、今依頼している業者に補修してもらって完全なものになればいいと思われることもあると思います。しかし、法律上、「不完全履行の場合に補修を請求できる」という定めがあることは限られた場合のみです。したがって、契約書に「契約どおりの義務が履行されているかを確認し、完全に義務を履行していないときには、補修・修繕を求めることができる」と定めておく必要があります。
問題は、補修や修繕にかかる費用を誰が負担するか、です。例えば、「A社はBから、ある工事を200万円で請け負い工事を完成させた。それでA社はBに完成したことを伝えた。Bが状況を確認すると工事が不完全だったので、そのことをA社に伝えた。A社が調査したところ、工事が不完全であったものの、補修には300万円以上かかることが判明した」ということがあったとします。この場合、補修費は誰が負担するでしょうか。
工事は完成させないといけないので、工事を完成させるための費用が既に定められている以上、たとえ補修をするのに300万円を超えたとしても、A社は自前で補修して工事を完成させなければなりません。したがって、補修費はA社が負担するということになります。
しかし、契約後に想定外のことが発覚して補修が必要になったのかもしれません。そんなときの補修費を全て負担しないといけないとなると、A社としてはリスクが大きすぎます。
ですので、契約書では例えば、「Bは契約どおりの義務が履行されているかを確認し、Aが完全に義務を履行していないときには、BはAに対し、補修・修繕を求めることができる。ただし、補修・修繕に50万円以上要する場合には、BはAに対して補修・修繕を求めることができない」として、補修・修繕に限度を定めておきます。つまり、上記のようなケースでは、Bは解約するかお金で解決するか、いずれかの方法しかないということになります。しかもAとしては、お金で解決することも想定して、契約書に損害賠償額の上限を定めておけば(損害賠償額の上限については、「契約書を作るときの注意点⑤」に書いていますので、ご参照下さい)、それ以上のお金をBに払わなくていいということになります。
特に請負や業務委託の場合には、こういった不完全履行のケースはしばしば見られ、その都度トラブルになります。出回っているテンプレートでは、不完全履行のときの補修費は、請け負った側・受託側が全額負担することになっていることが多いです。しかし、それでは請け負った側・受託側にとって、かなりのリスクになることもあります。想定外の事態が発覚して、補修費がかさむこともあり得ます。そういったときのリスクヘッジをするという観点から、補修費の限度を定めるかどうか、ご検討頂ければと思います。